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先例から学ぶ まちづくり勉強会vol.2 大崎町野方

先例から学ぶ まちづくり勉強会vol.2
2013年3月23日(土)15:00~17:00


大崎町提案公募型事業企画 :

大崎町 野方農村環境改善センター

【AAF】から見たアートとまちづくりの効用
アサヒ・アート・フェスティバルからのまちづくり実例紹介


講師:加藤種男氏
(公財)アサヒビール芸術文化財団顧問,(公社)企業メセナ協議会専務理事
野方公民分館は、未来を担う次世代のリーダー的人材の育成と、住民主体での持続可能な地域づくりの促進を 図るために、アサヒビール芸術文化財団顧問の加藤種男先生をお迎えし、講演会を開催いたします。みなさま 多数の参加をお待ちしております。


【講師:加藤種男氏プロフィール】 1948年兵庫県生まれ。 90年にアサヒビール(株)企業文化部課長就任以来、企業によるメセナ活動を幅広く リード。アサヒビールのプロジェクトとして、アサヒ・アート・フェスティバル、ロビーコンサート、 文化・音楽講座等多彩なメセナ活動を展開。 アートと市民社会をつなぐ企画のプロデュースを多数手掛ける仕掛け人としての顔 も持つ。 02年より、横浜市の創造都市横浜の旗振り役も務めた。 アートNPOリンク理事、日本NPOセンター評議員、沖縄県文化振興会アドバイザー、 新潟市「水と土の芸術祭」アドバイザー、東京都歴史文化財団エグゼクティブ・アド バイザー、埼玉県芸術文化財団評議員。 共著に『社会とアートのえんむす―つなぎ手たちの実践』。

【AAF】とは全国の市民グループやアートNPO、アサヒビールなどが協働で開催するアートのお祭り、アサヒ・ アート・フェスティバル(AAF)。 AAF には「未来」を展望し、「市民」が主体となって企画・運営し、「地域」の魅力を引き出し、コミュニティの再構築を めざすアート・プロジェクトが集まり、つながっています。 http://www.asahi-artfes.net

主催:大崎町野方公民分館
会場:鹿児島県曽於郡大崎町 野方農村環境改善センター内
後 援 : 大 崎 町 、大 崎 も の づ く り ネ ッ ト ワ ー ク 振 興 会

企画/進行:セカンドホームタウン プロジェクト(松本 充明 / JOU)
お問い合わせ・ご予約:野方公民分館 tel.: 099-478-3748(弓削)
*当日の様子はインターネットUstream中継予定です。→http://ustre.am/MK9j



当日の記録



H24年度大崎町提案公募型事業企画

まちづくり勉強会 vol.2

日時:2013年3月23日(土)15:00-17:00

会場:大崎町野方農業改善センター

主催:野方公民分館  (入場無料)

内容:「アサヒ・アート・フェスティバル(AAF)」から見たアートとまちづくりの効用
〜アサヒ・アート・フェスティバルからのまちづくり実例紹介〜

講師:加藤種男氏(アサヒビール芸術文化財団AAF事務局長、企業メセナ協議会理事)
進行/ ust/ WS:セカンドホームタウン事務局(JOU / 松本充明)

来場者数:22名
ust 視聴者数:43名(2013/3/30現在)
来場メディア:南日本新聞、南九州新聞

アサヒ芸術文化財団が主催するAAF(アサヒアートフェスティバル)では、全国各地のアート活動と地域おこし活動の団体を集結させ、情報交換や見学交流などネットワーク作りを支援して10年になる。そのメンバーは、毎年公募を審査し、50組前後で構成され、毎年3回、集まっている。そのメンバーの中の事例を紹介し、過疎地におけるアートと地域活性の話をした。






【事例1〜神山アーティスト イン レジデンス】

大崎町の人口の3分の一にあたる、わずか6000人の小さな町、徳島県の神山町は、林業、煙草、巣立ち、米などの農業を中心とした過疎地域であるが、昨年初めて、人口流出より流入が増えた。それは、人口を減らさない維持政策の成果によるものである。


【人口維持政策の始まり】

「町の人口が47年後にどうなるのか?」を大学教授に計算してもらったところ、「3世帯のみが暮らしている」、という結果が出た。
「そうならないためには、今後、どうしたらいいか?」をさらに計算してもらった所「毎年、子育て世代を5〜6世帯呼び込めば、人口は維持できる」という結果が出た。具体的な政策としては、2段階に分かれ、平行して実施されている。


【最初の呼び水としてのアーティスト誘致】

主な政策の主軸となっている[神山アーティスト イン レジデンス]では、世界中のアーティストを5〜6組公募し、毎年、空き家や廃校施設などをアーティストに使わせ、地域に滞在してもらう。
また、京都の美術や芸術関係の大学の学生(アーティストの卵)がインターンなどで滞在する。

アーティストは、住民では気がつかない、地元の良い所の発見者である。

日本全国の田舎には、どこも同様の問題がある。1つは「うちの村は何もない」と住民が思い込んでいること。もう1つのは、集落間の対立。
この2つの普遍的な問題は、クリエイティブな「よそ者」としてのアーティストを地域に取り込むことにより、緩和したり、解決したりすることが多い。
町づくりの話し合いなども、アーティストが進行するワークショップなどの形で行なえば、スムーズにいったり、新しい発見ができることも多い。

また、インターンの学生においては、「お父さんお母さん制度」を実施。滞在中、地元の後見人として、お父さん役とお母さん役をそれぞれの学生に引き合わせ、相談にのってもらうような仕組みを制定。この仕組みにより、地元のシニア層が、元気になった。
また、世界中のアーティストが訪れる町として、地域のイメージ向上と同時に地域に付加価値がつき、移住促進に役立った。


【子育て世代を呼び込み、移住させる】

限定期間のアーティスト イン レジデンス誘致の一方で、移住者誘致のターゲットを子育て世代に絞り込んだ。子育て世代の移住の条件は、仕事(収入)があること。雇用枠を作るのではなく、自営業を呼び込み、町で開業すれば食べていけるだけの見積もりを出してあげることをした。
「誰でもいいから来てください」という意識から、「町に必要な人材を、選ぶ」という意識に変えて、政策を行なった。
 まず、「うちの町に必要なもの、町の人が欲しいもの」を洗い出し、それができる人を誘致することにした。
例えば、「焼きたてパン屋が欲しい」という町の需要を移住促進につなげ、「子育て世代のパン屋ができる家族を誘致する」と目標を決め、町の広報に「パン屋募集」を掲載。最初の住居の容易だけしてあげて、後は、継続的な支援がなくても、パン屋だけで充分に家族が食べていけるような状況を前提に、誘致し、成功している。
パン屋の次は、お洒落な美容院、など、1つずつ実施していった結果、若い子育て世代の移住者確保につながった。

若い世代の誘致においては、最初の呼び水である「アーティスト イン レジデンス」により、アーティストが町にいるという人的環境づくりも行なっていたことも、相乗効果になっている。
外部の人材、アーティストを呼び込む空間的意識的すき間をどう作っていくか、自分達の目線や意識をどう変えていくか、が町づくりの成功に欠かせない要素でもある。

アートを活用した地域活性の好例として、現在、神山は全国から注目を集めており、毎日見学者が絶えない状況にある。


【事例2〜隠岐の島】

船便でしか行けない交通の不便な島にある3つの町のうち、尼島は、アートを活用した移住促進事業が成功し、人口増が見られている。西ノ島町は現在も過疎化が進んでおり、神社の宮司さんを中心に、アート活動が始まったばかり。今後の展開が期待されている。
いずれも、AAFにおけるネットワークと情報交流を活かし、政策や事業を展開していった事例でもある。
情報や人材をネットワーク化し、流通・交流させることで、効果が倍増したり早まったりすることができる。


【日本の問題】

産業コミュニティをどのように形成するか?
崩壊しつつある、地域社会の助け合いをどのように再生させるか?
阿部首相の演説にあった「息をのむ程、美しい棚田の風景」は、日本の財産であるが、同時に、効率化を追求すれば、維持不可能であると言う矛盾を抱えている。経済発展に必須な「効率化」と対極にある、心の支えとしての「思い出」や「美しい地域の風景」は、「非効率」的なものであるが、生きていいく上で必要不可欠なものでもある。
効率化を進める政府からは、「非効率だが必要なもの」をどう守っていくか?という政策は打ち出されていないがために、効率化の波と闘いながら、自分達の力で守っていかねばならない状況でもある。それに報いる政策があればいいが、今のところ、まだ見いだされていない。
この矛盾の緩和的解決として、アートが役に立つのではないか?


【効率化の中の非効率の価値】

アートは、非効率の象徴でもある。
例えば、踊りは、生身の人間が踊って初めて踊りになる。その家庭は非効率きわまりないが、だからこそ、面白い。押し花や生け花などでも同じ。食べ物でも同じ。大量生産のファーストフードがカッコいいと思う時代もあるが、結局最後は、手作りのおふくろの味に戻る。何故、手作りは飽きないのか?旨いのか?
本物を作るには、手間暇かかるが、それがあるとないとでは、社会の潤いが全く違って来る。

手作りの良さを維持するには、大量消費経済と平行した「コンパクト経済」を形成していくことが必要。衣食住の様々な場面で、その地域ならではの手作りの小さな産業を復活させ、地域内で流通させていくことも解決法の1つ。
大量消費経済=発展であるという我々のこれまでの思い込みは、本当だろうか?と自問し、本当に地域が潤う小さな経済を作り、育んでいくこともできる。
小さな経済の中では、生身の人間としての潤いある時間が存在する。
多店舗展開だけが事業の成功や幸せではなく、自分お家族が食べていけるだけ1店舗経営でも良い、という考え方がコンパクト経済。

そうして、地元の小さな経済を、次の段階では、どのように対外的にブランド化していくか、非効率で生産性の低いものに、どのように価値をおいていくか、という流れになるが、そこにはもちろん、努力と工夫が必要。


【被災地で、文化やアートが人の心の支えになった】

震災後、仮設住宅に住む生活者に欲しいものを聞いたら、「祭りの太鼓」「祭りの衣装」「地域の皆で祭りがしたい」という声が多かった。AAFでは以後、被災地への支援を文化に特化して行なっていった。
この例からもわかるように、地元の祭りや郷土芸能は、人々の生きる力を奮い立たせてくれる。
祭りは元々、見物客がいない、地元住民全員で作り上げる行事だった。唯一の見物人は、神様であり、祈願や祈りとしての舞や音楽が奏でられた。

近年では、地域の行事は薄れつつあるが、アーティストがイベントに加わることで、全員参加型の新しい形での「祭り」としてのアートが、数多く生み出されている。これは、時代の傾向でもあると言える。


【アートが関わる社会に必要なもの〜生きがいと長期の視点】

これからの社会に必要な3要素として
新しいコミュニティの再生、林業や環境創作も含めた地元の小さな産業育成、表現社会があげられる。これまで公共事業は道路や建設物に特化される傾向にあったが、これからは、山を復活させる林業なども、公共事業にしていくべきではないか。地域があらゆる角度から再生できるような試み全てが、公共事業になり得る。

人として、長寿を全うし幸せに生きるために、必要不可欠な要素は「社会に役立つ生きがいづくり」を1人1人が持っていること。設備投資でけでは、生きがいづくりにはならない。

シニア層に元気になってもらうためにも、年寄りの話を若いアーティストに語ってもらいたい。
年寄りが語る場所をどう作るか?

例えば、世代を超えて語れる場「寄り合い」を復活させ、そのコーディネーターとして、アーティストを活用し、複合的なソフトパワー形成土壌としての新しい「寄り合い文化」を作ってもらう、など。アートが関わることで、社会に必要なものを効果的に生み出し、育むことができている、というのがAAFの10年の実績の中に検証された事象でもある。


*当日の様子はインターネットUstream中継アーカイブからも見れます。
http://ustre.am/MK9j

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by osumiart | 2013-03-23 22:23 | まちづくり WS  community
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